SOD風俗覆面調査団員・近藤夢の風俗レポート

２０２０年夏季五輪の開催地が東京に決定した。東京開催に注目が集まるなか、複雑な心境で行方を見つめるのは風俗業界の関係者たちだ。万博やスポーツの国際的な大会、世界各国の要人が集まるサミットなどビッグイベントが行われるたびに「臭い物にふた」とばかり、各地の風俗街が狙い撃ちにされた過去があるからだ。業界関係者は「大規模な摘発を受けるかもしれない」と戦々恐々でいる。

　東京都台東区、浅草の中心街から北に約１キロ。下町風情漂う一角に全国随一のソープランド街「吉原」がある。

　「最盛期の１９９０年代には１５０軒ぐらいのソープランドが集まっていた。長引く不景気の影響もあって廃業が相次いだが、いまも１３０軒ほどが営業を続けている」（業界関係者）

　その吉原の関係者はいま、マドリード（スペイン）、イスタンブール（トルコ）、東京がデッドヒートを繰り広げる２０年夏季五輪の開催地選考を別の意味で見つめている。７日にブエノスアイレスで開かれる国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）総会で雌雄が決するが、「前々から『東京に決まったら困る』という話がチラホラあった。五輪のような大行事が来ると、必ずといっていいほど『環境浄化』の名目で、取り締まりが行われてきたので、ここもやられるのではないか、と」（吉原関係者）。

　実際、国際的な大イベントが開かれるたびに各地の風俗街が姿を消している。

　大阪市で「国際花と緑の博覧会（花の万博）」が行われた９０年前後には、市内のソープランドが一掃され、２００２年の日韓サッカーＷ杯のときも都内で風俗店の大規模摘発が行われた。

　０５年には関東有数の風俗街、横浜・黄金町が、横浜港開港１５０周年を記念する「開国博Ｙ１５０」（０９年）に向けた警察の一斉摘発で壊滅している。

　関係者が震え上がるのも無理はないが、吉原に関しては、別の見方もなくはない。

風俗情報誌『俺の旅』（ミリオン出版）の生駒明編集長は「吉原は都心から離れているため、仮に東京に決まっても難を逃れるのではないか。過去、摘発の対象になったのは繁華街のど真ん中にある店ばかり。吉原は世界的に有名なスポットなので、各国の関係者がお忍びでやってくることもありうる。逆に五輪特需が期待できるかもしれない」と話す。

　日本の風俗はその質の高さで世界的に知られる。

　「０２年の日米野球では、メジャーリーグの強打者が新宿の高級ソープに現れた。アスリート以外でも超有名なフランス人の二枚目俳優が、川崎のソープ街を楽しんだという目撃談もある。なかでも吉原は『日本一のソープ街』としてブランドが確立され、憧れを抱く外国人は多い」（先の業界関係者）

　では、現実的に取り締まりが強化されそうなのはどこなのか。生駒氏は、都心の繁華街に点在する店舗型風俗店を挙げる。

　「外国人観光客が立ち寄る機会の多い、池袋、新宿、渋谷あたりの店が狙われるのではないか。風俗営業法による規制が厳格化されて店舗型の店自体がここ数年でかなり減り、業界全体のデフレ化も進み、どこも経営が厳しい。集中取り締まりを受ければ全滅する恐れもある」

　締め付けが厳しくなると別の問題も生じる。廃業した業者が、デリバリーヘルスなどの無店舗型などに移行したり、地下に潜ったりする可能性が高いからだ。

　「無店舗型は、ホテルなどに従業員の女性を派遣して客と二人っきりにさせる。密室でのやりとりになるため、トラブルに発展しやすい。また、業者が地下に潜っていくことで、安全安心に遊べる場所が減っていきかねない」（生駒氏）

　東京五輪という悲願の陰で、さまざまな思いが交錯している。

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